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旅館・ホテルの売却価格は何で決まるか|稼働率・ADR・RevPAR・OTA・修繕CAPEXの見せ方

2026 9/09
観光M&Aコラム
2026年7月8日2026年9月9日
パソコンのグラフと机上の資料を確認する3人(説明用イメージ)
写真は説明用イメージです。実際の相談者・担当者・成約案件を示すものではありません。

旅館・ホテルの価値は土地建物だけでは決まりません。稼働率が高くてもOTA手数料が重ければ利益は残りにくく、ADRが上がっていても修繕投資が遅れていれば買い手の見方は慎重になります。譲渡企業側は、価格の根拠を数字と現場の両面から説明できるように準備する必要があります。

この記事で整理できること

旅館・ホテル・簡易宿所・宿泊特化型ホテルの譲渡を考えるとき、買い手候補が見る数字、現場、許認可、設備、人材、地域関係を、譲渡企業の視点で確認できます。

対象読者は、宿泊施設の売却や事業承継を検討しているオーナー、支配人、経理責任者です。すぐに売却を決めていない段階でも、情報を整理しておくことで、将来の選択肢が広がります。特に観光地の会社は、後継者、従業員、地域、金融機関、仕入先が複雑に関係するため、準備の早さが交渉の安定につながります。

目次

旅館・ホテルの価格は土地建物だけでは決まらない

旅館・ホテルの売却条件は、継続して得られる収益、不動産の権利関係、修繕負担、人員体制、借入等を総合して検討します。会社の株式を売るのか、運営事業を売るのか、土地建物を含めるのかを先に整理すると、比較対象が明確になります。

オーナーの個人負担や親族の無償業務がある場合は、承継後に必要な費用を別表で示します。不動産を所有する場合と賃借する場合では収益の前提が異なるため、資産価値と利益を単純に足して評価しないよう専門家と確認してください。特定の倍率だけで価格を断定することはできません。

  • 営業利益と不動産価値を分けて考える
  • オーナー依存の収益を調整する
  • 部門別の利益を説明する
  • 繁忙期・閑散期の収益差を示す
  • 譲渡後の投資余地を言語化する

稼働率・ADR・RevPARを買い手に伝わる形にする

客室稼働率は販売可能客室数に対する販売客室数、ADRは販売客室一室当たりの客室売上、RevPARは販売可能客室一室当たりの客室売上を把握する指標です。同じ集計基準なら、RevPARはADRに稼働率を掛けて求められます。食事付きプランの配賦、税、休館・販売停止客室の扱いを注記し、月次資料と決算書をつなげます。

例えば、販売可能客室1,000室泊、販売600室泊、客室売上900万円という架空の月なら、稼働率60%、ADR15,000円、RevPAR9,000円です。これは計算説明用で、当センターの案件や価格相場を示すものではありません。前年同月、客室タイプ、団体・個人客の構成を併記すると、単価と稼働の変化を説明しやすくなります。

  • 月別の客室稼働率を整える
  • ADRと客層の変化を説明する
  • RevPARを部屋タイプ別に見る
  • 団体・個人・法人需要を分ける
  • 値上げ余地と稼働維持の関係を示す

OTA依存と直販比率をどう見せるか

OTA(オンライン旅行予約サイト)、公式サイト、電話、旅行会社などの販路ごとに、売上、手数料、広告費、取消率、客層を並べます。直販比率が高いことだけで有利と決めず、自社予約にもかかる広告・システム・対応人件費を含めて比較します。

PMS(宿泊管理システム)とサイトコントローラーは、契約名義、権限、連携先、データ出力、切替費用を確認します。口コミや予約アカウントの承継可否は各社規約によるため、引き継げる前提で価値を積み上げないでください。過去の予約数と将来の予約残も別に管理します。

  • OTA手数料を販路別に整理する
  • 自社サイト・電話予約・常連客を分ける
  • 口コミ評価と予約転換率を見る
  • サイトコントローラーとPMSの運用を説明する
  • 販売停止・在庫調整の権限を明確にする

修繕CAPEX・設備更新・許認可の見通し

CAPEXは設備の取得・更新等のための投資です。大浴場、空調、厨房、客室、消防設備について、工事履歴、点検結果、故障、見積りを設備別に整理し、緊急是正、通常更新、任意の改装を分けます。工事費だけでなく、休館期間や販売停止による影響も示すと投資計画を比較できます。

旅館業の事業譲渡には、事前承認を受けて営業者の地位を承継する制度があります。契約を結ぶだけで手続が済むものではなく、管轄保健所への事前相談が必要です。温泉利用、飲食、消防・建築、借地、従業員寮等はそれぞれの権利・許認可・契約を別に確認し、一つの承認ですべて承継できるとは扱いません。

  • 大浴場・空調・厨房・客室の更新履歴を出す
  • 消防設備と建築設備の確認を先に行う
  • 旅館業許可や入湯税の論点を整理する
  • 従業員寮・駐車場・借地を確認する
  • 買い手が投資計画を描ける資料を作る

人材・地域関係が価格と条件に与える影響

女将、支配人、料理長が担う予約判断、採用、仕入れ、常連対応を役割表にします。担当者が残る場合と交代する場合の運営費・教育期間を分け、本人の意思を確認する時期も決めます。継続意向を本人の確約と同一視しないことが大切です。

地域との関係は名簿だけでなく、共同送客、行事、仕入れ、緊急時協力などの実務を説明します。雇用、屋号、料理、仕入先の継続は価格とは別の条件として候補先と協議し、合意内容を契約と移行計画に残します。買い手の計画が実行可能かを確認する姿勢が、承継後の不安を減らします。

  • 女将・支配人・料理長の役割を説明する
  • 従業員の継続意向を把握する
  • 旅館組合・観光協会・DMOとの関係を示す
  • 仕入先・送迎・二次交通を整理する
  • 屋号・暖簾・常連客への説明順を決める

価格交渉前に準備したい資料

決算書、月次試算表、客室・部門・販路別売上、借入残高、修繕資料を同じ基準日でそろえます。数字が一致しない場合は差異の理由を記し、未確認項目と見積りを実績から区別します。値上げや改装後の増収は、担当、予算、実施時期を伴う仮説として示します。

希望価格、税・借入等を考慮した手取り、雇用や屋号の条件は分けて検討します。手取りは取引方式や税務等で変わるため、個別に専門家の確認を受けてください。初期開示では会社を特定できる情報を抑え、候補先と範囲を確認して段階的に詳しい資料を共有します。

  • 決算書と月次試算表をそろえる
  • 部門別売上・販路別売上を作る
  • 修繕履歴と今後の投資見通しをまとめる
  • 匿名開示できる資料を分ける
  • 守りたい条件と譲れる条件を分ける

まとめ:観光事業の承継は、数字と地域の両方を整えることから始まります

旅館・ホテル・簡易宿所・宿泊特化型ホテルのM&Aでは、良い買い手候補に出会う前に、譲渡企業側が自社の価値を言語化しておくことが大切です。数字、許認可、設備、人材、地域関係を整理しておけば、候補先との面談で事業の強みが伝わり、条件交渉でも守りたいものを守りやすくなります。

観光M&A総合センターでは、売り手企業から当社への相談料・着手金・中間金・月額報酬・成功報酬はいただきません。第三者専門家への依頼費用や税金等は別途必要になる場合があります。売却を決める前でも、会社名を伏せた段階から論点を整理できます。料金と支援範囲は相談窓口でご確認ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件の価格、成約、税務、法務上の結果を保証するものではありません。具体的な判断は、案件の状況に応じて専門家へご相談ください。

確認に使える公的資料

  • 中小企業庁:中小M&Aガイドライン
  • 厚生労働省:旅館業の事業譲渡に関する手続

編集部確認日:2026年9月9日。制度・手続は変更されるため、具体的な案件では所管窓口の最新案内を確認してください。

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